文法書レビュー「くもんの中学英文法―中学1~3年 基礎から受験まで」&中学英文法とTOEIC英文法のギャップをいかに埋めるか?
くもんの中学英文法―中学1~3年 基礎から受験まで (スーパーステップ)
TOEICの勉強をやり始めて、基礎文法の知識が不足したと感じて中学レベルの英文法をやり直そうと思った時、検討すべき1冊です。中学1年レベルの初歩的な文法事項から中学3年、高校受験までで、文法項目ごとにわかりやすく書かれています。TOEICで必要とされる文法知識の多くは中学レベルでカバーされています。一通り最初から読んで全体を確認することでもいいですし、あるいは弱点部分だけ復習しておくことでも価値はあります。
例えば、関係代名詞が苦手なら、そこを見直す。接続詞の働きがいまいちわからなければ、例文を見ながら確認する。TOEICのPART5でも頻出の品詞に関係する、形容詞や副詞の働きがあいまいなら、その部分を見る。文法用語の目的語や補語、不定詞の形容詞的用法(形容詞のはたらき)、副詞的用法(副詞のはたらき)などの意味が分からなければ確認するといったようにポイントを絞ってやることでもいいでしょう。
では、中学の英文法を一通り復習した後、何に意識してTOEICの問題に当たっていけばいいでしょうか?
TOEICレベルの問題に対応するためには
中学レベルの英文法を一通り復習した後でも、TOEICの問題は難しいと感じられるかもしれません。中学レベルの文法知識と、TOEICの問題を解くために必要な知識のギャップがどこにあるか考えてみたいと思います。
まず、TOEICの単語・語彙のレベルは中学の範囲を超えていることがひとつの理由です。中学レベルの基礎単語もありますが、中学では習わない単語が多く出てきます。知らない単語・語彙が出てくると、文法知識として持っていても、文の意味を捉えるのが困難になります。TOEIC新公式問題集などに出てくる単語を覚えて、単語・語彙力をアップいくことは必要になってきます。
もうひとつが、基本的な文法事項であっても、TOEICでは応用した形で出題されることです。例えば、主語があって、述語動詞で構成される第1文型の主語S+動詞Vは、中学で習う文法事項です。こうした基礎文法知識に関して、TOEICでは、主語を単純な1語にしないで、前置詞などをからめて主語を長くし、述語動詞との距離を長くして、読むのに慣れていないと理解しにくい文にして出題してきます。
次のような例文を考えてみましょう。
Weekly guided tours of the chocolate factory begin at 11:00 A.M. in front of the reception desk.
この文は、文型でいえば、一番簡単な第1文型になります。ただし、主語Sが” Weekly guided tours of the chocolate factory”と長くなっていて、動詞の”begin”までが離れているため、意識しないとどこまでが主語であるかわからなくなる可能性があります。2番目のguidedを動詞の過去形と思ったり、3番目のtoursを三人称現在単数形で”s”のついた動詞だと思ったりするかもしれません。
スラッシュ(区切り)と解説を入れると、
Weekly guided tours / of the chocolate factory (ここまでが主語)/ begin (これが述語動詞)/at 11:00 A.M. (時間に関する前置詞句)/in front of the reception desk.(場所に関する前置詞句)
となり、大きくわけて5つのパートから構成されます。
※意味は、スラッシュの区切りで分けて、「毎週行われるガイド付き見学は/チョコレート工場の/始まります/午前11時に/受付デスクの前で/」となります。
※TOEICではtourは「見学」という意味でよく出ます。
これが次のような中学レベルの例文であれば、理解しやすいと思います。
The tours begin at 11:00 A.M.
上の2つの文の理解に大きなギャップがある場合何をすればいいか?
TOEICの問題に対応するためには、中学レベルの英文法知識に加えて、(1)単語・語彙のレベルアップ、(2)長めの英文(前置詞句などが途中に入ってきているものなど)を読んで文の形を理解することです。
読んでわかりにくい長めの文は、上でやったようにスラッシュで区切ります。そして、知っている文法知識を活用しながら理解していくことから始めるのがいいと思います。TOEICの傾向に沿った単語・語彙を増やしつつ、英文の読む量を増やしていけば、きっと英文の理解力が上がるはずです。
基礎的な文法知識をつけたうえで、長めのやや複雑な文を読む練習を増やすことが、読解力をつける効果的な方法のひとつであることは間違いないでしょう。