韓国と日本のTOEIC勉強法は何が違う?

短期集中・目標スコア・学習管理から比較

前回の記事では、2025年のTOEIC Listening & Reading Test(以下、TOEIC L&R)の平均スコアが韓国682点、日本564点で、118点の差があることを紹介しました。また、1990年には日韓の平均がほぼ同じだったことから、現在の差を生まれつきの英語力や教育の優劣だけで説明することはできない、と確認しました。

では、実際の勉強法にも違いがあるのでしょうか。「韓国では全員が有名塾に通い、学習グループで大量の問題を解いている」というイメージを持つ人もいるかもしれません。しかし、最新の調査を見ると、韓国でも教材による独学やオンライン講義が学習方法の上位を占めています。

違いが表れやすいのは、勉強する場所よりも学習の設計です。韓国では、就職や卒業などの期限までに必要な点数を取るため、目標スコアと準備期間を先に決め、短期間に学習量を確保する仕組みが発達しています。

この記事では、韓国TOEIC委員会の2026年調査と韓国の大手TOEICスクールの現行講座を手がかりに、韓国の学習スタイルを検証します。そのうえで、日本の学習者が無理なく取り入れられる部分を具体的に考えます。

韓国式TOEIC学習の違いは「特別な解法」より「学習設計」

必要な点数と期限から逆算する

韓国の学習者が日本とはまったく異なる文法や解法を使っているわけではありません。Part 5で品詞や動詞の形を見分け、Part 3・4で設問を先読みし、Part 7で時間配分を練習する。試験形式が同じである以上、学ぶ内容の基本は共通しています。

一方、学習を始める理由には違いが見えます。第1回で紹介した2025年下半期の韓国の採用調査では、TOEICの基準点を明示した195件のうち「700点以上」が103件で最多、「800点以上」も44件ありました。

応募や卒業までに必要な点数が決まっていれば、「英語力を上げたい」という漠然とした目標ではなく、「3か月後までに700点」のような計画になりやすくなります。

つまり韓国式学習の出発点は、特別な勉強テクニックというより、必要なスコアと受験期限が先にあることです。そこから、現在の実力、残り期間、毎週こなす課題を逆算します。

韓国でも独学とオンライン学習が中心

韓国TOEIC委員会が2026年1月19日から31日に実施した学習目標調査では、TOEIC受験予定者が主に利用する方法として「教材による独学」が47.2%で最多でした。次が「オンライン講義」の31.3%です。少なくとも、この調査からは「韓国のTOEIC学習者は主に通学塾で勉強している」とは言えません。

独学か通学かという二者択一で考えるより、教材や動画で自分のペースを保ちながら、必要に応じて講義、模試、学習管理を組み合わせていると捉える方が現在の状況に近いでしょう。

この調査の読み方 回答者の52.9%は就職準備中の人で、30.6%は会社員、14.3%は大学生でした。また、目標スコアや準備期間の数字は、全回答者のうち2026年にTOEICを受験する予定がある56.6%を対象としています。韓国人全体や全受験者を代表する統計ではありません。

韓国では目標スコアを高く、具体的に設定する

受験予定者の67.2%が850点以上を目標

同じ2026年調査では、受験予定者の目標スコアで最も多かったのが900~945点の25.1%、次が850~895点の23.5%でした。950点以上の18.6%を加えると、850点以上を目標とする回答者は67.2%になります。さらに、800~845点の18.0%を加えると、800点以上では85.2%です。

かなり高い目標ですが、これを「韓国の受験者の3人に2人は850点を取る」と読み替えてはいけません。示しているのは取得スコアではなく目標スコアであり、就職準備中の回答者が多い調査だからです。それでも、TOEICを受けようとしている人の間で、目標点が具体的かつ高めに設定されていることは読み取れます。

図1 2026年・韓国のTOEIC受験予定者が目指すスコア


850点以上を目標とする回答者は合計67.2%。調査回答者のうち、受験予定がある人を対象とした結果。

講座も目標スコア別に分かれている

韓国の大手語学学校HackersのTOEIC講座は、入門600点、基礎700点、中級750点、正規850点、問題演習900点といった目標帯に分けられています。現在地と目標によって、授業の難易度や扱う問題を変える設計です。

この考え方は独学でも使えます。現在500点の人と750点の人では、同じ900点を最終目標にしていても、今取り組むべき内容は違います。500点前後なら単語と基本文法、750点前後ならPart 3・4の先読みやPart 7の時間管理など、次の一段階に必要な課題を優先した方が効率的です。

準備期間は「1~3か月」の短期集中が中心

58.9%が1~3か月での準備を予定

2026年調査で、TOEIC受験予定者に準備期間を尋ねたところ、「1~3か月」が58.9%で最も多くなりました。「4~6か月」は19.4%で、半年以内を予定する回答者を合わせると78.3%です。

これは、韓国では全員が3か月で高得点を取れるという意味ではありません。しかし、勉強が完成するまで受験を先延ばしにするのではなく、数か月の学習期間を区切り、その期間内に試験を受ける考え方が表れています。

図2 2026年・韓国のTOEIC受験予定者が考える準備期間


1~3か月が58.9%で最多。数値は実際に要した期間ではなく、調査時点で予定していた準備期間。

短期集中の利点は同じ形式を繰り返せること

TOEICでは、200問を約2時間で処理します。知識があっても、リスニングの音声についていけない、Part 7で時間が足りない、後半で集中力が落ちる、といった問題が起こります。こうした課題は、勉強する日が大きく空くより、一定期間に同じ形式を繰り返した方が改善点を次の演習に反映しやすくなります。

例えば、日曜日の模試でPart 7を15問残したなら、翌週は読む順番と設問ごとの時間を調整し、次の日曜日に再び確認できます。学習間隔が短ければ、前回の失敗と修正点を覚えたまま次の練習に進めます。

ただし、短期集中とは、毎日何時間も勉強しなければならないという意味ではありません。仕事や学校がある日本の学習者なら、「平日は60分、週末は模試と復習」のように、生活に合わせて期間と最低学習量を固定する方が現実的です。

韓国のスクールは授業だけでなく学習を管理する

スコア別授業・課題・弱点管理を組み合わせる

韓国の大手スクールの案内を見ると、講義だけでなく、短期修了を掲げた学習グループ、追加資料、個別の弱点管理、リアルタイムの学習相談などが前面に出ています。通学する価値を「先生の説明」だけでなく、「計画どおり勉強を続ける仕組み」として提供している点が特徴的です。

独学では、理解したつもりでも同じ間違いを繰り返したり、苦手なPart 7を後回しにしたりしがちです。課題の提出、単語テスト、進捗確認があれば、勉強する内容と期限が外から決まります。自制心だけに頼らず学習量を確保できるのが管理型学習の利点です。

学習グループの役割は進捗確認

韓国のTOEIC学習グループは、英会話を楽しむための集まりというより、単語テスト、課題の確認、間違えた問題の説明などに使われます。重要なのは大人数で勉強することではなく、「決めた課題を終えたか」を他人に確認してもらうことです。

もっとも、先ほどの2026年調査では独学とオンライン講義が上位です。したがって、学習グループは韓国式学習の必須条件ではありません。一人で計画を守れる人は必要ありませんが、勉強が続きにくい人には、家族や学習仲間に週1回進捗を報告するだけでも似た効果を期待できます。

短期集中型の学習をモデル化するとどうなるか

韓国の現在の講座構成などを参考に、短期集中型の学習を一つの流れに整理すると、次のようになります。これは韓国の全学習者に共通する方法を示した統計ではなく、日本の学習者にも応用できる学習モデルです。

図3 短期集中型TOEIC学習のサイクル


問題を解いて終わらず、間違いの原因を次の学習内容に反映することが重要。


このサイクルで特に重要なのは、4番目の原因分析です。単語を知らなかったのか、文法を理解していなかったのか、音を正しく聞き取れなかったのか、時間不足だったのか。原因が違えば、次に行う学習も変わります。

日本と韓国の違いは「目的」と「管理方法」に表れやすい

日本では「英語学習のため」が最多

IIBCが公表した2025年のETS世界調査では、日本の受験目的は「英語学習のため」が29%で最多でした。一方、韓国TOEIC委員会の2026年調査では、TOEIC受験予定者の受験目的として「就職」が66.5%で1位です。

ただし、この2つは調査時期、対象者、質問方法が異なるため、「日本29%対韓国66.5%」という直接比較はできません。ここから言えるのは、日本では英語学習、韓国の調査回答者では就職が、それぞれ最も多い目的として表れたということです。

就職や卒業の必要条件として受ける場合は、スコアと締め切りを明確にしやすくなります。学習の到達度確認として受ける場合は、受験期限が曖昧になりやすいかもしれません。こうした目的の違いが、学習計画の立て方にも影響している可能性があります。

観点韓国で確認できる傾向日本の学習者への示唆
目的就職を目的とする回答者が多い受験する理由を具体化する
目標高い目標スコアを設定する回答者が多い現在地と次の目標を数値で決める
期間1~3か月の準備予定が最多受験日を先に決めて期間を区切る
方法独学・オンラインも多い通学そのものを目的にしない
管理目標別講座や弱点管理が目立つ課題・復習・進捗を可視化する

違うのはPart別の解き方より運用方法

日韓でPart 5の文法やPart 7の読解法が根本的に違うわけではありません。差が出やすいのは、「何点を、いつまでに、どのくらいの量をこなして取るか」を決め、進捗を管理する部分です。

逆に言えば、日本に住んでいても同じ学習設計はできます。韓国のスクールと同じ時間割や学習量をそのまま真似する必要はありません。自分の生活の中で、受験日、目標スコア、毎週の課題、復習方法を固定すればよいのです。

日本の学習者が取り入れられる5つの方法

1 勉強を始める前に受験日を決める

「十分に勉強してから申し込む」ではなく、まず1~3か月先の受験日を決めます。試験日まで8週間なら、前半4週間で基礎と苦手分野を学び、後半4週間で時間を測った問題演習を増やす、といった計画が立てられます。

2 目標を一段階ずつ設定する

最終的に900点を目指す場合でも、現在500点なら、最初の受験で600点、次に730点というように中間目標を置きます。目標との差が大きすぎると、単語、文法、リスニング、長文をすべて同じ割合で勉強しがちです。次の一段階に必要な内容へ絞った方が、学習の優先順位が明確になります。

3 毎日の最低学習量を固定する

「時間があれば勉強する」ではなく、平日は単語20分、Part 5を20問、リスニング30分など、最低限行う内容を決めます。時間を固定しにくい人は、「60分勉強する」より「単語30語とPart 5を20問」のように、量で決めても構いません。

4 間違いを原因別に分ける

正解・不正解だけを記録しても、次の勉強は決まりません。間違いを原因別に分類すると、限られた期間で優先すべき課題が見えてきます。

間違いの原因次に行う学習
単語を知らなかった単語帳や例文に戻り、翌日と1週間後に確認
文法を理解していなかった該当する文法項目を確認し、類題を解く
音を聞き取れなかったスクリプトと音声を照合し、短く区切って再生
設問・選択肢を読めなかった先読みする情報量とタイミングを調整
読むのが遅かった同じ文章を時間を測って読み直す
時間配分を誤ったパート別の終了時刻を決めて模試で検証
ケアレスミス正解の根拠を説明してから答えを確認

5 同じ問題を説明できるまで復習する

短期集中というと、毎日新しい問題を大量に解くイメージがあります。しかし、間違えた理由を説明できないまま問題数だけを増やしても、同じ弱点が残ります。正解の根拠と誤答の理由を自分の言葉で説明できるまで復習し、その後で新しい問題に進む方が効果的です。

目標スコア別に優先順位を変える

目標スコア優先する学習確認すること
600点頻出単語、基本文法、Part 2・5の基礎時間より正答率を優先できているか
730点Part 3・4の先読み、Part 7の時間管理根拠を聞く・読む位置を特定できるか
800点苦手パートの集中演習、模試失点原因が特定の分野に偏っていないか
900点本番時間での模試、細かなミス分析難問より取りこぼしを減らせているか

短期集中型の勉強法にも弱点がある

問題数をこなすだけになる危険

短期間で多くの課題をこなそうとすると、解説を十分に読まない、答えを覚えるだけになる、復習が後回しになるといった問題が起こります。長時間勉強していても、同じ原因で間違い続けていれば、学習量がスコアに結びつきません。

また、毎日の課題が多すぎれば、睡眠や仕事に影響し、途中で継続できなくなる可能性があります。最初から最大量を設定するより、必ず続けられる最低ラインを決め、余裕がある日に追加する方が安定します。

TOEICの高得点と英語力全体は同じではない

TOEIC L&Rの短期対策は、英語を聞く力と読む力を試験形式の中で発揮するために有効です。しかし、スピーキングやライティングまで自動的に伸びるわけではありません。試験後も英語学習を続けるなら、会話、作文、多読など別の練習も必要です。

したがって、韓国の学習法をそのまま日本人が真似すればよい、という結論にはなりません。TOEICの目標を達成する期間は短く区切り、その後は英語力全体を伸ばす学習に戻るなど、目的に応じて使い分けることが大切です。

まとめ

韓国と日本でTOEICの問題形式が違うわけではなく、韓国だけに通用する特別な解法があるわけでもありません。韓国式学習の特徴として注目したいのは、必要なスコアと期限を先に決め、短期間で学習量を確保し、課題と弱点を管理する仕組みです。

2026年の韓国TOEIC委員会の調査では、受験予定者の67.2%が850点以上を目標とし、58.9%が1~3か月の準備期間を予定していました。一方、主な学習方法は教材による独学が47.2%、オンライン講義が31.3%です。この結果からも、韓国式を「全員が塾で勉強する方法」と捉えるより、「目標と期間を明確にする学習設計」と捉える方が適切です。

日本の学習者が取り入れるなら、1~3か月先の受験日を決め、現在のスコアから一段階上の目標を設定し、毎週の課題と復習状況を確認する方法が現実的です。問題を大量に解くこと自体ではなく、間違いを分析し、次の学習へ反映するところまでを一つのサイクルにしましょう。

では、短期集中と大量演習を支える韓国の教材には、どのような特徴があるのでしょうか。次回は、韓国で目立つ「1000問」タイプの問題集をはじめ、日本と韓国のTOEIC教材の違いを比較します。

シリーズ記事

第1回 韓国のTOEIC平均点はなぜ日本より高い 就職と社会背景から考える

第2回 韓国と日本のTOEIC勉強法は何が違う 短期集中と学習設計から比較する

第3回 韓国のTOEIC問題集は何が違う 1000問模試と900点から990点までの勉強法

参考資料

1. 韓国TOEIC委員会「2026年 TOEIC・TOEIC Speaking学習目標調査」

2. 韓国TOEIC委員会「2025年下半期主要企業採用公告のTOEIC活用状況」

3. IIBC「2025年TOEIC Tests 世界の国・地域別平均スコア発表」

4. Hackers語学院 TOEIC講座・学習プログラム

Follow me!